2015年 夏の講演会 開催報告書

関西東大会夏の講演会が、下記の通りに開催されましたので、報告致します。

日 時; 2015年8月30日(日)
場 所; ホテルグランヴィア大阪 20階
受 付; 14:30〜
講演会; 15:00 〜 16:30 「鶴寿(かくじゅ)の間」
懇親会; 17:00 〜 19:00 「名庭(なにわ)の間B」

【講演会】
講  師; 東京大学 大学院 医学系研究科
神経病理学分野 教授 岩坪 威 先生

演 題; 「認知症の早期診断と予防・治療〜アルツハイマー病研究の最新の話題から」

【岩坪 威 先生 プロフィール】
1984年、東京大学 医学部 卒業
1986年、同大医学部附属病院神経内科 入局
1989年、同学部附属脳研究施設脳病理学部門 助手
1992年、同大薬学部機能病態学寄付講座客員 助教授
1998年、同大大学院薬学系研究科臨床薬学教室 教授
2007年、同大大学院医学系研究科神経病理学分野 教授




講演会 報告
幹事 安原 徹(昭58法)

去る8月30日に東京大学大学院医学系研究科神経病理学分野教授の岩坪威先生をお迎えして、「認知症の早期診断と予防・治療〜アルツハイマー病研究の最新の話題から」とのテーマでご講演いただきました。概要は次のとおりです。

(1)本日の講演内容
    アルツハイマー病の脳の中ではどのようなことが起こっているのか。
    それを防ぐためにどのような最新治療が開発されつつあるか。
    アルツハイマー病の根本的な治療薬を実用化するためにヒトでどのようなことを確かめなければならないか。
    J−ANDI研究とは何か。それが治療薬の開発にどのように役立つのか。

(2)認知症(dementia)とは何か、
・認知機能の障害により独立した生活を営めなくなった状態をいう。
・ある日突然起こるのではなく、どこから認知症と線を引くかは問題。
・大脳皮質などの神経細胞が死滅 ⇒ 脳細胞の回路が壊れ、機能障害を起こすことが症状が出る原因(うつ病、統合失調症は脳の細胞が壊れるわけではない)。
・記憶障害その他の大脳機能が進行性に低下。
・高齢になるほど多く発症。加齢が最大の危険因子。
・国内だけでも認知症患者は462万人。そのうち3分の2がアルツハイマー病。

(3)認知症の症状とアルツハイマー病
    中核症状
脳機能の低下を直接示す。
・記憶障害
・見当識障害(ここがどこで、今がいつなのかがわからなくなる)
・判断力の低下
    行動・心理症状
暴力・暴言・徘徊・拒絶・不潔行為・抑うつ・不安・幻覚など。
中核症状以上に生活ケアの大きな障害となる。
アルツハイマー病は老年者に認知症をもたらす代表的な疾患
(2番目に多いのは脳血管性認知症、3番目はレビー小体型認知症)。

(4)アルツハイマー病の原因
第一の鍵
脳は神経細胞がつながりあった巨大なコンピュータのような構造。アルツハイマー病の脳のシナプスにおける神経伝達物質に着目する考え方。
1990年代より生化学が進歩し、アルツハイマー病の脳ではアセチルコリンという神経伝達物質が減少していることがわかったが、原因解明とはならなかった。ただし、治療の分野では、正常時にもアセチルコリンを分解しているコリンエステラーゼの働きを抑え込むことによって脳内のアセチルコリンを増やすという治療薬が開発された。ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンという3種のコリンエステラーゼ阻害剤が承認されている。
また、グルタミン酸は脳内のシグナル伝達に関わっているが、アルツハイマー病の脳ではグルタミン酸の異常な放出が続いて神経伝達物質を傷めるので、グルタミン酸の働きを調整するという試みがなされた。これがグルタミン酸受容体阻害薬で メマンチンという名称で承認されている。
もっとも、これらの薬は病気の進行を遅らせるもので、根本的な治療薬ではない。

第二の鍵
アルツハイマー病の脳のなかで何が起こっているかに着目。つまり、アルツハイマー病の脳の海馬の顕微鏡写真によると、神経細胞の脱落、神経原線維の変化、老人班が見られる。神経原線維の変化はPHFという線維からなり、その主成分がタウ蛋白であることがわかっている。一方、老人班はβアミロイドとよばれる蛋白から成っている。現在では、タウ蛋白は細胞死の原因となり、βアミロイドは病因に関連すると考えられている。

第三の鍵
稀な家族性(遺伝性)アルツハイマー病の病因遺伝子の発見。これらの変異がアミロイド(Aβ)の蓄積を亢進する。

(5)根本的な治療薬への戦略
どうやって脳内にアミロイドβペプチド(Aβ)が蓄積しないようにするか。このAβができるプロセスでセクレターゼという酵素が重要な役割を担っていることがわかってきた。APP(Aβ前駆体蛋白質、Aβのもととなる蛋白質)を切断してAβが産生されるが、この働きを抑制するγセクレターゼ阻害薬、βセクレターゼ阻害薬が作られた。γセクレターゼ阻害薬については治験の結果、改善が確認できず2010年に開発中止。βセクレターゼ阻害薬については現在開発が進んでおり、実用化が期待される。
一方、免疫療法(ワクチン療法、抗体療法)も研究が進められている。即ち、抗体がアミロイドにひっついて目印をつけ、掃除屋のような細胞に食べさせる療法や、抗体がAβに付いてアミロイドを作らせなくする療法など。前者については2,000名の治験をしたが臨床効果がなく2012年に中止。後者についても治験の結果臨床効果なしとされたが、軽症のアルツハイマー病に限ると効果があった(イーライリリー社のソラネズマブ)。





(6)早期診断
アルツハイマー病の臨床症状は80歳前後で急増し、それまでは軽度認知障害にとどまっている。しかし、神経細胞の病理に着目すると60歳台でタウ蛋白による神経原線維が増加、さらにアミロイド病理については50歳台でアミロイド蓄積が始まっている。発症の10〜15年以上前からアミロイドがたまり始めるので早期診断の可能性が研究されている。つまり、症状が全然ないが、アルツハイマーの病理変化が始まったプレ・クリニカル・アルツハイマー病段階の治験が求められる。
超早期診断の実用化にはバイオマーカー(判定基準)の実現が必要。
    画像診断はバイオマーカーになる。
・MRI
・ブドウ糖PET
・アミロイドPET(アミロイドに結合する化合物を放射能で認識し、PETでアミロイドの蓄積を認識する)
    脳脊髄液中の物質の測定はバイオマーカーになる。

(7)J−ADNIについて
2007年〜13年にかけて、アルツハイマー病の根本治療薬の効き目の判定基準(バイオマーカー)を決める全国研究J−ADNIが実施された。これは、健常高齢者、軽度認知障害、軽症AD(アルツハイマー病)の方を定期的に検診し、評価基準を作ろうというもの。
・アミロイドPETの進歩が貢献。
・健常な人の4分の1はアミロイド陽性。
・アミロイド陽性MCI(軽度認知症患者)の認知症への進行率は45%。
・症状発症前のプレクリニカル期ADに対する抗Aβ薬の予防治験が期待される。


以上
 
懇親会 報告
代表幹事 河野 裕亮(昭53経)


懇親会会場に移動ののち、安橋幹事の司会で懇親会が開会となり、夏住副会長の開会の
挨拶のあと、辰野 克彦 副会長の乾杯の音頭で、賑やかな食事歓談が始まりました。

歓談の途中でご来賓の
東海銀杏会代表幹事 浅野 晴彦 様
大阪京大クラブ代表 安達 篤夫 様・同 並木 宏徳 様
の皆様にご登壇いただき、ご祝辞を賜りました。
そして、

東大ワールドカフェ担当 小林 良洋   幹事
ゴルフ同好会世話人 夏住 要一郎 副会長
中堅・若手会担当 中島 亮平  幹事
旅行グルメ同好会世話人 慶田 雅洋  様

に、秋に開催予定の行事をご紹介いただきました。

しばしの歓談の後、菊池顧問にカンツオーネ、白井顧問に詩吟をご披露いただき、 その後、今回初めて関西東大会の行事にご参加いただいた方々に、自己紹介とご挨拶をお願いしたところ、皆様熱弁をふるわれました。

そして、恒例の東京大学応援歌「ただ一つ」を全員で斉唱いたしました。

最後に日笠代表幹事が、閉会を宣言し、来年1月24日(日)開催予定の総会兼新年会での再会を期して、関西東大会講演会はお開きとなりました。
以上

関西東大会のホームページへ



 

コメント
コメントする








   

calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< September 2017 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

書いた記事数:708 最後に更新した日:2017/09/12

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM